2011年10月15日土曜日

蜘蛛様

部屋に小さな蜘蛛様がいる。 

僕が帰宅すると、つーっと上から降りてきてベッド脇の階段に着地し、どっか行ってった。 
現在、天井と壁の境目あたりに陣取って瞑想中。 


思えば越してきた頃からなんだか常に、これくらいのサイズの小さな蜘蛛様がいる。 

はじめのうちは、見かけるたびに窓の外へ丁重にご退出頂いていたのだが、何度出してもいつの間にかまた入ってきているので、すっかり根負けした。女の子にはモテないが蜘蛛にはモテる。 

しばらく蜘蛛様を見かけない間にGな奴が出て、ひたすら対G地雷を敷設しまくった経験もあり、蜘蛛様が退治してくれないだろうかなぁという思いもあって。益虫っていうし。 


とりあえず放任中。 

あまり大きくは育たないでほしい。 

2011年10月9日日曜日

府中の森芸術劇場で逢いましょう


金曜は会社早引けしてブラスエクシードのコンサートへ。
吹奏楽+αでドラクエの交響曲をやるというんで、興味ひかれてチケットとってた。


↓ホームページにあった会場へのアクセス。
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武蔵小金井駅 下車
  武蔵小金井駅南口(5番乗り場)よりバス約20分、徒歩約7分
  武蔵小金井駅南口(1番乗り場)よりバス約20分、徒歩約10分
  武蔵小金井駅南口よりタクシーで約15分 1,400円程度
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↓それを見た僕の感想
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ちょwww バスで20分で徒歩で7分とかwww
どんだけ車で行きにくい場所にあるんだよwww
それかバス遠回りしすぎだろwww
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時間に余裕を持って武蔵小金井駅に着き、優雅に駅前のサイゼリヤで夕食など食べる。
開場は18:30、開演は19:00 
早めに行っとくか、と僕がサイゼリヤを出たのは18:20
歩きはじめた。7分経った。iPhoneのグーグルマップを見るが、全然距離が縮まっていない。
さらに歩いた。もう数分経った。会場までの道の半分も来ていない。
おかしい。方向はあってるのに縮尺がおかしい。

そうしてようやく気付いたのは35分頃。






       |
   \  __  /
   _ (m) _ピコーン
      |ミ|
   /  .`´  \
     ∧_∧  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    (・∀・∩< あ、バスで約20分のあと、最寄りのバス停から徒歩で約7分ってこと?
    (つ  丿 \_________
    ⊂_ ノ
      (_)




     ・
     ・
     ・




<脳内イメージ>


       ,-'"ヽ    
      /   i、       / ̄ ̄ ヽ,      _/\/\/\/|_  
      { ノ   "' ゝ    /        ',     \          /
      /       "' ゝノ {0}  /¨`ヽ{0}     < ニャーン!! >
      /              ヽ._.ノ  ',    /          \       
     i                `ー'′  '.     ̄|/\/\/\/ ̄       
    /                       }.          
    i'    /、                 ,i..          
    い _/  `-、.,,     、_       i          
   /' /     _/  \`i   "   /゙   ./          
  (,,/     , '  _,,-'" i  ヾi__,,,...--t'"  ,|           
       ,/ /     \  ヽ、   i  |           
       (、,,/       〉、 、,}    |  .i          
                `` `     ! 、、\          
                       !、_n_,〉>

                 .,,......、
    _、   _         ヽ `'i ,‐..,      ___,,,,,,,、
  '|ニ- /   !│        ,!  ゙'"  l     l  ゙    ゙l, 
   ././    .! ヽ        !  ,i--'"゛     ゙'''"'''/  ,,r'''”
   l .!     ! l \     _,,,,,,,)  |         ,,  `゙‐'゜
   ! |    / | ヽ`   /..,,,,,_.   `''-、     ,┘゙,k 
   ヽゝ-__-‐'ノ      | .'(__./  .,、  `'、.   |  '{,,___,,,,,,,,、.〟
    ─‐'''´       ヽ,、   _./ `'-、,,ノ .   'v,_   ̄`  : ,,,l
                 . ̄´            .゙~゚'冖''''"'゙”″





どうして気付かなかったんだ。
なぜバスで20分でタクシーで15分のところに徒歩で7分で行けると俺は思ったんだ。
マップで見て、随分離れてるように見えるなー、でも7分だしなー、とかなんで思ってたんだ。
正直、俺の頭もう駄目なんじゃないかと思った。


残り時間約25分。会社帰りのYシャツ姿で僕は素敵に疾走です。青春すぎた。
車道の脇を走り、公園の中を走り、疲れたから途中から小学生以来のスカウトペース(電灯から電灯の間までで走りと歩きを繰り返すボーイスカウトの進行ペース)とか使った。

辿り着いた3分前。距離にして約4キロ弱。
おまえ何してきた的にだらだらの汗をハンカチで拭きまくりつつ、会場INしましたとさ。



で、音楽はとても良かった。(一行)

2011年9月5日月曜日

電話番号暗記帳

 暗記している電話番号が4つある。

 自分の携帯の番号と、
 実家の固定電話の番号と、
 別れた彼女の携帯の番号と、
 別れた彼女が買い換えた携帯の番号、の4つだ。

 後ろの2つにとても困っている。


 もちろん、付き合っていた当時の携帯に、番号を保存する機能がなかったわけではない。当然あった。
 けれども当時高校生のガキのことであり、恋に恋した面もあった元カノさんは、「私の番号を暗記していつも諳んじられるようにしておけ」と僕を脅した。
 結果、僕は鎌倉幕府とか平安京的なノリで、二つの番号を覚えさせられた。
 別れたあともその番号は、1192とか794と同じように、頭の中に記憶されたままだ。

 困るのは、自分の連絡先を言ったり書いたりするときである。ウェブサイトで会員登録したり、カードに申し込んだり、TSUTAYAで会員証の更新をしたり、図書館のカードに書いたり……連絡先を記入する機会というのは多い。
 そんなとき、やってしまいそうになるのだ。うっかりすると。
 自分のじゃない連絡先が、つい。ぽろっと。

 実家の固定電話の番号は、脳ミソの中でしっかりと区別がついている。番号と、『実家の』っていうタグ付けが完全に紐づいている。これは市外局番のせいかもしれないし、数字列を素のまま記憶しているためかもしれない。
 携帯の番号の方は、全部090で始まって個性がないのもあるし、脳ミソの中での記憶の仕方も、それこそ『イイクニ』みたいに音素で覚えて、そこから数字に変換する覚え方をしている。ざっくりと言えば、年号は覚えてるけど何があったのかは「1192作ろう鎌倉幕府!」ってフルセンテンスで言ってみないとわからないよ! って、そんな感じになってしまっている。

 結果、ご連絡先は? と訊かれたときに、咄嗟に思い浮かぶ音素列が、自分の番号か否か――ちょっと落ち着いて考えないと自信が持てないという、悲しいことになってしまった。


 忘れられれば良いのだが、そのためには思い出さないことが必要だ。でも自分の番号を告げるときに、自分の番号だと確信するために、3つの携帯番号を順に思い出し、「うん、これじゃなくこれじゃなく、これで間違いない!」という確認作業をいつもしているために、一向に記憶が風化しない。
 実際問題として困るし、昔の彼女を忘れられない奴……みたいな感じになってしまってよろしくない。


 いっそのこと気にすんのやめようかなぁ。頭の中で確認せずに、間違っちゃっても別に俺困らないし。

 ……といかがわしいサイトの会員登録連絡先欄にカーソルをあてながら思う今日この頃である。

2011年7月25日月曜日

雑記

 日曜は会社のオーケストラを観に行った。社員価格でちょっとだけ安くなるので、たまには文化的な生活でもしてみようかということで。

 こういう催しを観るときは、大体、中心から外れたところを見ることにしている。
 サッカーだったらボールを蹴って走ってる選手じゃなく、まったく逆のところに離れて立った選手を、演劇だったら中心で叫んでる役者ではなく、出番が終わって捌けるところの人を、美術館だったら飾られている絵画ではなく、絵画のちょっと下の壁の染みとかを。

 オーケストラといえば気になるのが、やはり指揮者の人ではなくて、太鼓の人とシンバルの人だ。
 ずっと立って待っていて、ドン! バシャーン! ドン! バシャーン! ドン! バシャーン! ってやってから、二人揃って膝の上に手をやって座ったときはもう感動に襲われた。
 あとはティンパニの人が、スティックで一回だけ叩いてその後出番がないところとか、凄く面白い。

 何聴いたかよく覚えてないけど、そんな感じでとても充実したオーケストラだった。


 ところで近頃サッカーが面白いらしく、会社の同期が夜中のサッカーの試合を見ていて寝不足だという。この前は女子サッカーが盛り上がってて、今は南米選手権がやっているそうな。
 サッカーとか何処が面白いんだろ。
 ゴールの前でボールを眺めながら突っ立ってるだけじゃん。

2011年7月5日火曜日

ぼくはくま

 暑い。あまりにも暑い。
 暑くて頭がヘンになりそうだ。

 会社でサマータイムが始まり、毎日早く起きている。
 睡眠時間は減少するし、なのに気温だけはじりじりと焦げるように暑い。
 正直、これでは、仕事に対する集中力が続くはずもない。

 今日はもう全然集中できなかったので、宇多田ヒカルの「ぼくはくま」を頭の中でずっと歌っていた。


---------歌詞-----------

ぼくはくま くま くま くま
くるまじゃないよ くま くま くま
歩けないけど踊れるよ
喋れないけど歌えるよ
ぼくはくま くま くま くま

ぼくはくま くま くま くま
けんかはやだよ くま くま くま
ライバルはエビフライだよ
ゼンセはきっとチョコレート
ぼくはくま くま くま くま


--------------------


 この歌はなんとなく好きである。
 なにが好きかというと、始まってすぐに、くまが「くるまじゃないよ」と断りを入れるところ。

 会ってすぐにこんな断りを入れるということは、くまは、車と間違われる経験が多いということだろう。
 もちろん、本気でくまと車を間違える人間がいるというのは、にわかには信じがたい。僕自身、28年間生きてきて、そこそこの経験は積んできたつもりだが、それでも車と間違われたことはなかったと思う。
 つまり、くまは日頃から、車と呼ばれてからかわれており、でもそれがいやなので、「くるまじゃないよ」とまず断りを入れ、くまとしての自己のアイデンティティを確保しようとしているのである。
 その、「くるまじゃないよ」と言うときの、くまの不安げな表情が想像されて、可愛らしく、なんとも微笑ましい気分になるのである。

 だがずっと会社で、頭の中で歌っていると、ちょっと気になることがでてきた。
 今まで微笑ましい歌としてずっと聴いてきたのだが、その次の、「歩けないけど踊れるよ」「喋れないけど歌えるよ」というフレーズが、妙に引っ掛かった。
 
 これまでは、踊れる、歌える、という部分にばかり意識がいって、その部分を気にかけたことがなかった。くまもなかなか楽しそうだなぁ、と僕は無邪気にその歌を聴いてきたのだ。
 だが、「歩けない」「喋れない」というのはどういうことか。普通に考えれば、歩けないのに踊れるわけがなく、喋れないのに歌えるわけがない。
 ならば何故、くまはそんな嘘を、おおっぴらに、まず自己紹介したのか。
 本当に、歩けず、喋れないのだとすれば、それは何故なのか。くまに何があったのか。

 くまは歌う。

『けんかはやだよ』



 ここでまず、くまの人間関係を整理してみることにした。
 歌詞から推測できるくまの人間関係は、以下の図のとおりだ。




 さて、ここで僕は、くまがこの中の誰かから、いじめを受けているのではないかと推測した。
 論拠は、以下の通りである。

 ・くまは、くるまと間違われることを恐れている。(いつも呼ばれてからかわれているため)
 ・くまは、歩けず、喋れない状態にされている。(そのことについて、でも踊れる、歌える、と主張し、いじめられながらもプライドを守っている)
 ・くまは、けんかを嫌がっている。


 おそらく、くまとしても、面と向かって「ぼくはいじめを受けている」とは言えないのだろう。だがこれだけのSOSのシグナルがあれば、やはり気付いてやらねばならないのだ。
 では、くまをいじめている犯人は誰か。

 まず前世であるチョコレートは排除できるだろう。別人であるところのくるまも、くまとよく間違われる張本人なわけで、いじめっこがからかってくるまの名前を使っているのであれば、くるま本人はいじめっこではないと推測できる。
 やはり怪しいのは、ライバルのエビフライだ。チョコレートは貴族も嗜む高級な嗜好品であるし、くるまは輪をかけて高価な乗物であり、それぞれ育ちの良さが窺える。だが、エビフライはしょせん油にまみれた揚げ物であり、いくらタルタルソースを付けて美味しかったところで、その育ちの悪さは隠せない。
 だが、くまがストレートに「ライバルはエビフライ」と言及しているところが引っ掛かる。くまの心理からいって、敵対関係、と表で表明できるような状態ではないと思うのだ。エビフライはストレートに怪しいがゆえに、逆に怪しくないのである。

 行き詰まって、二番の歌詞を聴いてみた。
 すると、そこには新たな登場人物がいた。


---------歌詞-----------

ぼくはくま くま くま くま
冬は眠いよ くま くま くま
夜は「おやすみ、まくらさん」
朝は「おはよう、まくらさん」
ぼくはくま くま くま くま

夜は「おやすみ、まくらさん」
朝は「おはよう、まくらさん」
ぼくはくま 九九 くま
ママ くま くま


--------------------


 更新した関係図は以下のとおりだ。

 


 まくらさん。
 こいつとの関係は、よくわからない。他のキャラとの関係は明示的に示されているのに、まくらさんについては、くまが挨拶していることしか窺えない。朝晩一緒にいるらしいが、それは仲の良い関係なのではないか。
 だが、ただ挨拶を繰り返すだけの関係は、果たして健全なものだろうか。

「おやすみ、まくらさん」
「おはよう、まくらさん」
「おやすみ、まくらさん」
「おはよう、まくらさん」
「おやすみ、まくらさん」
「おはよう、まくらさん」

   ↓

「おやすみ、まくらさん」
「おはよう、まくらさん」
「おやすみ、まくらさん」
「おはよう、まくらさん」
「おやすみ、まくらさん」
「おはよう、まくらさん」

 挨拶を繰り返すうち、くまの瞳は徐々に虚ろになっていく。

   ↓

「おやすみまくらさん。おはよう、まくらさん。おやすみ、まくらさん。おはようまくらさん。おやすみまくらさんおはようまくらさん。おやすみまくらさん、おはようまくらさん。おやすみまくらさんおはようまくらさんおやすみまくらさんおはようまくらさんおやすみまくらさんおはようまくらさんおやすみまくらさんおはようまくらさんおやすみおやすみおやおやおやおやおやおやおや


ぼくはくま 九九 くま
ママ くま くま」


 こういうことだったのだ。

 まくらさんとくまとの間で、何があったのかは謎である。
 そこには狂気じみてはいるが、ある種の愛憎のようなものが感じられる。単なるいじめではなかったからこそ、くまとしても、喋れないけど歌えるよ、とまくらさんを庇うような発言をしているのかもしれない。

 最後にはついに、自分のくまという名前さえ言えなくなってしまったくま。最後に口から飛び出した言葉は「ママ」。

 ……なんともやるせない真相だった。



 そんなことを考えていた7月の昼下がり。
 それにしても暑い。あまりにも暑い。
 暑くて頭がヘンになりそうだ。

2011年3月15日火曜日

香典とぼく

ちょっと持て余しているものがある。
会社から貰った香典だ。

去年の年末、祖母の葬儀があって九州まで帰った。
僕は皆がしめやかにしているとふざけたことを考えたくなる性癖があるので、
祖母の棺桶を葬儀屋さんたちが持ち上げて運んで――

いるところで葬儀屋さん足滑らせてずるべたーん!

棺桶ひゅーーんと宙を飛んでってどかーーーーん!!

ちょっと何しよっとね! と祖母ちゃん白装束姿で出てきて抗議!!!

……という一連のドリフ的な展開を想像して一人で楽しんでいた。


そんな大変に厳粛な葬儀だったわけだが、年明けてから会社から香典が支給された。5000円。喪主である僕の父向け。
これの取り扱いに困っていたのだ。



すぐに渡せれば問題なかった。葬儀のときに渡すのであればそれでいい。
でも貰ったのは年明けであり、別に郵送するようなもんでもないし、次に実家帰ったときに渡せばいいや~……とかなんとか思ったまま三ヶ月近く過ぎてしまった。

……なんというか、今頃渡すきっかけが掴めない。


結婚のご祝儀とかだったら、遅くなって渡すのでもなんの問題もないと思う。

「遅くなったけどはいこれ!」
「え、何?」
「二人の幸せを祈ってます!」
「ありがとう!これからも二人で頑張っていきます☆ミ」

自然だ。



では香典の場合はどうか。


「遅くなったけどはいこれ!」
「え、何?」
「故人の冥福を祈ってます!」
「ありがとう!これからは天国で頑張っていきます☆ミ」


……なんか、すごく変なことになってしまう気がする。



普通の日常に戻ってるところに、わざわざ忌事のものを持ち出すのもなぁと。でかい金額ならばともかく、5000円程度のことで。
かといって自分で使い込んでしまうには、やはりそこは香典だ。僕の存在しない良心がじくじくと痛んでならないし、ホラー漫画とかだったら即呪われて死ぬコースに入ってしまいそうだと思う。


結局どう取り扱っていいか持て余したまま、社長名の記された香典袋はずっと僕のレオパレスの机の隅で埃をかぶっていた。


しかし気付いた。



       |
   \  __  /
   _ (m) _ピコーン
      |ミ|
   /  .`´  \
     ∧_∧  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    (・∀・∩< そこで募金じゃね?
    (つ  丿 \_________
    ⊂_ ノ
      (_)



募金してしまえば、わざわざ今更忌事の金を父に渡すこともない。
僕の良心も痛まない。
呪われることもないだろう。


そんなわけで。






募金してみました。



祖母も許してくれるだろう。うむ。

2011年3月14日月曜日

地震の日の行動録

■3月11日 午後二時半過ぎ
会社の福利厚生ポイントでデジカメを書い、売店から居室に戻ろうとしていたところで地震に遭う。
その前日に会社で避難訓練をしていたので、なかなか空気を読んでいるなと話しつつ、同期と手近な出口から外へ避難。
十分ほどして揺れが収まってから、居室に戻った。

先輩「何処に行ってたの。みんな心配してたよ」
僕  「デジカメを買ってました」


■午後三時過ぎ
館内放送「火の元の安全の確認はとれました。絶対に社外に出ないでください」

昨日の避難訓練の意味はなんだったんだろう。

ネットで情報収集しつつ合間に仕事。Twitter経由で皆の安否を確認しつつ。
周囲は既に通常業務に戻っている。わりと平和な社内。


僕  「絶対、食器、落ちて割れてるだろうなぁ」
先輩「神奈川だったら、それほど酷くないんじゃない? 割れてないかも」
僕  「絶対割れてますよ。だって、揺れなくても落ちて割れそうな場所に置いてありますもん」
先輩「うーん」


■午後六時過ぎ。大森付近
電車が完全に停止してることを確認。バスもなし。
歩いて帰るしかないらしい。約三時間かかるらしいが。

同期と一緒に社外に出ると、皆行列のようになって歩いていた。建物とかも全然無事。
冷たい風に吹かれつつ、人の群れの中に混じって環七を歩く。


同期「Vari、『夜のピクニック』って知ってる? なんか思い出した」
僕  「読んだことないけど知ってる。高校生が夜を徹して歩き通すっていう青春小説だよな」
同期「いい話だよ」
僕  「ちなみに俺はスティーブン・キングの死のロングウォークを思い出した」
同期「どんな話?」
僕  「高校生が夜を徹して歩き通して、」
同期「うんうん」
僕  「疲れて歩けなくなった奴から兵士に射殺されて、最後の一人になるまでひたすら歩き続けるっていう話」
同期「……いい話だね」


■午後六時半過ぎ
同期「みんな、この寒いのに、歩いて帰るもんだよね。なんというか、人間って偉いよなあ」
僕  「家に帰りを待っている大切な人がいるからだろうな。ちなみに俺らは苦労して家に帰っても、暗くて物がぐちゃぐちゃになった部屋しか待ってないけど」
同期「リア充どもしね」


■午後七時半過ぎ。
途中、橋の上から遠くで赤々と炎が上がっているのが見える。火事だ。
武蔵小杉あたりまで歩き、そろそろ休憩のために飯屋に入りたいと相談するが、なんと街ごと停電。車のライト以外に明かりがない。
信号は根こそぎ消えて、警官が交通整理中。

同期「星が綺麗だなぁ」
僕  「ナンパの練習?」
同期「一人で歩いてる若い女の子探してるんだけどいないんだよね」

捕まれ。


■午後八時過ぎ。
日吉まで行っても全部停電。ひたすら真っ暗。
駅に人集りができて、電話とトイレに並んでいる。
さすがに足が痛くなってきたのでベンチで休憩。これは家に帰っても停電してるかもと思い、iPhoneに懐中電灯アプリをインストールする。
さすがに都市部でこんな真っ暗な光景を見ると、やはりこれから電気は復旧せず、物資や水も不足し、陽の光は射さず、むしろ人類の大半は既に絶滅してしまっていて、略奪が横行し、




こんなんが出てくるのかなぁと、ちょっと不安になった。
やっぱりその際には可愛い女の子と逃避行したいところ。
同期も不安感を感じたらしい。
映画で言えば開始後まだ二十分というところなのに、既にして諦念している。


同期「ぼくが死んでも、ぼくのこと忘れないでね…」
僕  「きみだれ?」


■午後九時過ぎ。
綱島を抜けたあたりで、電気が見え始めた。文明の光。
どうやら危ういあたりで家の周囲は電気が通っていた模様。
コンビニに入るとおにぎりやサンドイッチ系は既になく、お茶とスナック菓子だけ購入。
食い物屋がやってなければ、それを夜食にするつもりだったが、さらに行くと普段通りの光景があって一安心。

そこには魚民があった。


■午前0時。
帰宅。食器割れてなかった。朝家を出たときと同程度の汚さ。
ようやく実家にも電話が繋がり、無事を確認。
そのまま寝た。