2011年3月15日火曜日

香典とぼく

ちょっと持て余しているものがある。
会社から貰った香典だ。

去年の年末、祖母の葬儀があって九州まで帰った。
僕は皆がしめやかにしているとふざけたことを考えたくなる性癖があるので、
祖母の棺桶を葬儀屋さんたちが持ち上げて運んで――

いるところで葬儀屋さん足滑らせてずるべたーん!

棺桶ひゅーーんと宙を飛んでってどかーーーーん!!

ちょっと何しよっとね! と祖母ちゃん白装束姿で出てきて抗議!!!

……という一連のドリフ的な展開を想像して一人で楽しんでいた。


そんな大変に厳粛な葬儀だったわけだが、年明けてから会社から香典が支給された。5000円。喪主である僕の父向け。
これの取り扱いに困っていたのだ。



すぐに渡せれば問題なかった。葬儀のときに渡すのであればそれでいい。
でも貰ったのは年明けであり、別に郵送するようなもんでもないし、次に実家帰ったときに渡せばいいや~……とかなんとか思ったまま三ヶ月近く過ぎてしまった。

……なんというか、今頃渡すきっかけが掴めない。


結婚のご祝儀とかだったら、遅くなって渡すのでもなんの問題もないと思う。

「遅くなったけどはいこれ!」
「え、何?」
「二人の幸せを祈ってます!」
「ありがとう!これからも二人で頑張っていきます☆ミ」

自然だ。



では香典の場合はどうか。


「遅くなったけどはいこれ!」
「え、何?」
「故人の冥福を祈ってます!」
「ありがとう!これからは天国で頑張っていきます☆ミ」


……なんか、すごく変なことになってしまう気がする。



普通の日常に戻ってるところに、わざわざ忌事のものを持ち出すのもなぁと。でかい金額ならばともかく、5000円程度のことで。
かといって自分で使い込んでしまうには、やはりそこは香典だ。僕の存在しない良心がじくじくと痛んでならないし、ホラー漫画とかだったら即呪われて死ぬコースに入ってしまいそうだと思う。


結局どう取り扱っていいか持て余したまま、社長名の記された香典袋はずっと僕のレオパレスの机の隅で埃をかぶっていた。


しかし気付いた。



       |
   \  __  /
   _ (m) _ピコーン
      |ミ|
   /  .`´  \
     ∧_∧  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    (・∀・∩< そこで募金じゃね?
    (つ  丿 \_________
    ⊂_ ノ
      (_)



募金してしまえば、わざわざ今更忌事の金を父に渡すこともない。
僕の良心も痛まない。
呪われることもないだろう。


そんなわけで。






募金してみました。



祖母も許してくれるだろう。うむ。

2011年3月14日月曜日

地震の日の行動録

■3月11日 午後二時半過ぎ
会社の福利厚生ポイントでデジカメを書い、売店から居室に戻ろうとしていたところで地震に遭う。
その前日に会社で避難訓練をしていたので、なかなか空気を読んでいるなと話しつつ、同期と手近な出口から外へ避難。
十分ほどして揺れが収まってから、居室に戻った。

先輩「何処に行ってたの。みんな心配してたよ」
僕  「デジカメを買ってました」


■午後三時過ぎ
館内放送「火の元の安全の確認はとれました。絶対に社外に出ないでください」

昨日の避難訓練の意味はなんだったんだろう。

ネットで情報収集しつつ合間に仕事。Twitter経由で皆の安否を確認しつつ。
周囲は既に通常業務に戻っている。わりと平和な社内。


僕  「絶対、食器、落ちて割れてるだろうなぁ」
先輩「神奈川だったら、それほど酷くないんじゃない? 割れてないかも」
僕  「絶対割れてますよ。だって、揺れなくても落ちて割れそうな場所に置いてありますもん」
先輩「うーん」


■午後六時過ぎ。大森付近
電車が完全に停止してることを確認。バスもなし。
歩いて帰るしかないらしい。約三時間かかるらしいが。

同期と一緒に社外に出ると、皆行列のようになって歩いていた。建物とかも全然無事。
冷たい風に吹かれつつ、人の群れの中に混じって環七を歩く。


同期「Vari、『夜のピクニック』って知ってる? なんか思い出した」
僕  「読んだことないけど知ってる。高校生が夜を徹して歩き通すっていう青春小説だよな」
同期「いい話だよ」
僕  「ちなみに俺はスティーブン・キングの死のロングウォークを思い出した」
同期「どんな話?」
僕  「高校生が夜を徹して歩き通して、」
同期「うんうん」
僕  「疲れて歩けなくなった奴から兵士に射殺されて、最後の一人になるまでひたすら歩き続けるっていう話」
同期「……いい話だね」


■午後六時半過ぎ
同期「みんな、この寒いのに、歩いて帰るもんだよね。なんというか、人間って偉いよなあ」
僕  「家に帰りを待っている大切な人がいるからだろうな。ちなみに俺らは苦労して家に帰っても、暗くて物がぐちゃぐちゃになった部屋しか待ってないけど」
同期「リア充どもしね」


■午後七時半過ぎ。
途中、橋の上から遠くで赤々と炎が上がっているのが見える。火事だ。
武蔵小杉あたりまで歩き、そろそろ休憩のために飯屋に入りたいと相談するが、なんと街ごと停電。車のライト以外に明かりがない。
信号は根こそぎ消えて、警官が交通整理中。

同期「星が綺麗だなぁ」
僕  「ナンパの練習?」
同期「一人で歩いてる若い女の子探してるんだけどいないんだよね」

捕まれ。


■午後八時過ぎ。
日吉まで行っても全部停電。ひたすら真っ暗。
駅に人集りができて、電話とトイレに並んでいる。
さすがに足が痛くなってきたのでベンチで休憩。これは家に帰っても停電してるかもと思い、iPhoneに懐中電灯アプリをインストールする。
さすがに都市部でこんな真っ暗な光景を見ると、やはりこれから電気は復旧せず、物資や水も不足し、陽の光は射さず、むしろ人類の大半は既に絶滅してしまっていて、略奪が横行し、




こんなんが出てくるのかなぁと、ちょっと不安になった。
やっぱりその際には可愛い女の子と逃避行したいところ。
同期も不安感を感じたらしい。
映画で言えば開始後まだ二十分というところなのに、既にして諦念している。


同期「ぼくが死んでも、ぼくのこと忘れないでね…」
僕  「きみだれ?」


■午後九時過ぎ。
綱島を抜けたあたりで、電気が見え始めた。文明の光。
どうやら危ういあたりで家の周囲は電気が通っていた模様。
コンビニに入るとおにぎりやサンドイッチ系は既になく、お茶とスナック菓子だけ購入。
食い物屋がやってなければ、それを夜食にするつもりだったが、さらに行くと普段通りの光景があって一安心。

そこには魚民があった。


■午前0時。
帰宅。食器割れてなかった。朝家を出たときと同程度の汚さ。
ようやく実家にも電話が繋がり、無事を確認。
そのまま寝た。