2013年4月27日土曜日

ある文章の告発


Kindle新刊、『ある文章の告発』を発売しました。

"私は犯人を告発する文章である。それは私の持って生まれた使命である。" 
轢き逃げ犯人告発のためにこの世に書き落とされた「文章」。
文章の書き手は、どう生きていいのかわからず堕落し、強請りに身を落としたどうしようもない男だった。それは己の身体に、生きる目的である文面を持っていないからだと、まだ若い文章は考えていた。
文章は、口封じされてしまった書き手の代わりに、犯人の罪を世間に知らしめようと、様々な人間たちに己の文面を訴えていく――!

とまあ、"文章"の一人称小説というめちゃくちゃヘンな小説です。

主人公である告発状のほか、ラブレターや督促状、植物図鑑や交換日記など、いろいろな文章たちが出てきます。
人間とは違い、”文面”という明確な生きる理由を持った文章たち。
彼らが自分の文面を伝えようと奮闘する様を、そして主人公の告発状と轢き逃げ犯人の対決を、楽しんで頂ければ幸いなのです。

2013年4月18日木曜日

死体ころがし

なんとなくミステリーを考えてみているんだけど、いまいちぴんとこない。
自分、叙述トリック系で読み手を騙すことは好きなんだけど、犯人は誰か…! みたいな面白さって、あんまり馴染みがないんだよな。

だって別にいいじゃん誰が殺してたって(´・ω・`) ダレカガコロシタンダヨ

冒頭で死体を転がせ、というのがミステリの格言らしいんだけど、別に死体が転がっていてもなぁ。

今日は天気がいいですね。
風がとても気持ちいいですね。
そこに死体が転がっていますね。

みたいな感じで、それほど話題にそそられない。

もちろんミステリ作家とかは頑張って、死体を百個並べてみたり、千個並べてみたり、いろいろコーディネートして工夫しているわけだけれど。
でもやっぱりまあ、死体は死体なわけじゃないですか。
チキンカレーもビーフカレーもポークカレーも、カレーはカレーでしょ? というか。もちろん、カレーは国民的なメニューだし、僕だってカレーは好きだけど……でも、カレーでしょ。

僕的には、
「冒頭で死体を転がそうと思ったが、いい加減飽きたので自分が転がってみた」
とかではじまった方が、え、なんで自分が転がっちゃったの、悩みでもあるの? という感じでまだ興味も湧くんだが。


いっそ、謎を謎のままにしておくために頑張る話でも書こうかなぁ。
謎を解き明かそうとしてくる探偵に対抗し、まったく関係ない証拠品や証言を用意しまくって、謎を謎のままにしようと画策する奴らの青春の話。
東に犯人が指紋を残していれば、行って自分たちの指紋をべたべたと貼り付け、西に犯人が決定的な証拠品を残していれば、行って第二第三第四第五の意味深な証拠品をばらばらとばらまく。
謎は謎だからこそいいんだ! 謎を解き明かそうとする奴は神をも恐れぬ悪魔だ!
やたら直感にすぐれた探偵に対抗していく彼らのあいだで、ある日最初の犠牲者が――


こんな感じで僕の頭のなかでは日夜どうでも良いネタが製造されていきます。
 

2013年4月17日水曜日

きんぷれ!

こくぼしんじさんの運営するサイト、きんぷれ! にて、『メカねこと空気入れ』の無料プレビューが見られるようになりました! こちらです。
きんぷれ! は、Kindleで本を出している個人作家の作品のなかから、厳選されたもののプレビューを30%〜70%公開し、気に入ったら作品を買ってもらおう、というもの。メカねこは最終的に半分ほどを公開する予定です。


Kindleで出しはじめた当初から、僕が考えてたのは「純粋な読み手」に読んでもらえるようになりたいな、ということ。
というのは、現状のKDP(KindleDirectPublishing)は、Kindleで本を出してみたい「書き手」たちの間で閉じているかなと思うから。
個人出版をしてみたい、あるいはしている書き手が、既に出ている個人出版本に興味を持って、買う。書き手と書き手の間の流通、ですな。

でもKindleストアを訪れる人たちのなかで、自分も本を出してやろう、なんて考えの人は、ごくごくわずかにすぎないわけです。
ほとんどの人は、Kindle paper white だかKindle Fireだかを買って、あるいはiPhoneかiPadにアプリをいれて、よーしパパ電書で読書しちゃうぞー、みたいな好奇心で、Kindleストアを見てるはず。KDPなんて仕組みに興味ある物好きなんて、一握りじゃないかな。
そんななかで書き手だけの間で流通させても、それって内輪受けにすぎないだろう、と。

じゃあ、純粋な読者が、個人出版に手を伸ばす動機って何かなと考えると、現状「値段」しかないわけで。
パパ電書で読書しちゃうぞー、試しに無料でなんかDLしてみるか、じゃあ夏目漱石の「こころ」と一緒に、よくわからんがものは試しに個人の本でもDLしてみるか、無料だし。そんなノリ。
で、つまらなかったら、やっぱ個人が出したものなんて面白くないね、東野圭吾でも買うか、でオシマイ。以後個人出版なんて見向きもしない。
純粋な読者層が、わざわざ信用のないものに手を伸ばすモチベーションといったら、「商業出版のものより安かった」か「無料だから試しに」以外ないでしょう。
だって同じお金あったらベストセラー作家の本買うもん。絶対。わざわざ個人出版に手を伸ばすなんて物好きだけさ。

では値段で勝負するために――と考えたときに、なんとAmazonは既にそのための仕組みを用意してくれているわけです。それが三ヶ月の間に五日間だけ無料キャンペーンを打つことができるというやつ。さすがAmazon様、実に気がきく。Amazon様ありがとうございます、私は犬でございます。
でも犬の分際で言うのもなんだけれどさあ、これっていまいち面白くないんだよね。なんというか、個人出版は無料でDLできるのが当然、なんて層を増やしても、ちっとも楽しくないという。
もちろん無料で読んで面白かったので他のは買おうと手を伸ばす人がいてくれたり、無料でDLされてランキングで上位にいって、人の目に触れやすくなってそこから――とか、メリットもいろいろあるんだけれども。
いまひとつ、やりがいに欠けるかなと。
せっかく個人でやることなんだから、数字がどうとかそういうんじゃなくて、もっと楽しくてやりがいあることしたいなぁと。


そんなかで、じゃあ別の売り方としてこんなのはどうなんだ――っていうのをこくぼさんが出してくれたので、さっそく飛びついてしまったわけなのでした。

無料で見てもらいやすく(まあサイトが認知されないといけないけれど)、面白いと思ってもらえたらお金も出してもらえるかもしれない。思われなけりゃ確実に出してもらえない。それっていいなと。
そもそも見てもらえない普通の売り方や、面白さに関係なくDLされる無料キャンペーンよりも、夢があるではないですか!

楽しくなるといいなぁ、と思って参加を申し込ませてもらったのでした。
そんなわけで、試しに見てってね!(*´Д`)
 

2013年4月14日日曜日

「グローバル」と言った方には死を以って償っていただきます。

 日本全国から大企業の社長たちがとある会場に集められた。
 シローくんも意気揚々と会場に向かう。

「グローバル?」「グローバルグローバル!」「サービス!!」「イノベィショーーン!!」

 いつもどおり楽しく歓談していた社長たち。
 だが主催者が現れ、あるルールを告げたことで、会場の雰囲気は一変した。

「これから皆様には、横文字抜きで会話をして頂きます。破った方には死をもって償って頂きます――」


「きみ、それはどういうことかね?」
 騒然とする社長たちのなかで、一人の社長がまず声をあげた。
「かなりドラスティックなディシジョンになるので、コンセンサスをとるためにはそのストラテジーにどんなビジネススキームがあるのか説明するようプッシュする必要があるね」

 轟く銃声。
 発言した社長は四方から銃弾を受けて血だるまになって倒れ伏した。
 ざわつき慌てる社長たち。

「待て! このイシューについてはペンディングの!」
「コンカレントなオーソライズがインタラクティブ!」
「ユビキタスなソリューションがコンフリクトすぎて!」
「イノベィショーーン!!」

 次々に脳味噌吹っ飛んで息絶えていく社長たち。

「重ねて申し上げます。皆様には、横文字抜きで会話をして頂きます。破った方には死をもって償って頂きます……」


 何を喋ればいいかわからなくなった社長たちは沈黙。
 そのまま誰も何も喋らないまま三十分が過ぎた。

 だが社長たちは徐々に、我慢できなくなっていく……。


(言いたい……!)

 シローくんは、四方から銃を突きつけながら、それでもその衝動を抑えることができなくなっていた。

(グローバルって言いたい……!!)


 そうしてついに、トイレで便器に向かって叫んでいた社長が連れられていくのを尻目に、シローくんは決意するのだ。


 自分がどうなってもいい。
 会社がどうなってもいい。

 ただグローバルって言うために、そのためだけに、オレは仕事をしてきたんじゃなかったのか――!


 そんなシローくんの前に、ゼンジが現れこう告げる。

「社長。その心意気、惚れました。あとは私に任せ、社長は初志貫徹を――!」

 ゼンジはシローくんににこりと微笑みかけると、マイクを渡して促すのだった。(続かない)

2013年4月8日月曜日

オレの会社はグローバルイノベーションソリューションサービスカンパニー

とあるメーカーに勤めているのだが、ここ数年、社長たちの操る言語の優秀さに舌を巻いている。

「グローバル」「イノベーション」「ソリューション」「サービス」

うちの会社の社長たち、このあたりの限られた横文字数語だけで、コミュニケーションのほとんどをこなしているようなのだ。凄すぎる。



ソフトウェアの世界では、低級言語と高級言語という言葉がある。
低級言語とは、たとえば子供におつかいを頼むときに、

「お金を手に握りしめてね」
「玄関のドアを開けてね」
「500メートル歩いてね」
「リンゴを指さしてね」
「大きな声で、くださいと言いましょう」

みたいに、たくさんの指示を必要とするコンピュータ言語のことだ。

高級言語はこれを、「あそこの八百屋でリンゴを買ってきて」の一つの指示で済ます言語のこと。
コンピュータは高級言語を解釈し、低級言語の粒度まで落として、動作し命令を完遂する。


言語の優秀さとは、巨大な意味空間を、いかに数の少ない語彙と文法で表現できるかということだ。
洗練された言語体系は、一切の無駄がないためにその語彙セットのサイズは小さい。



うちの社長たちが使用する言語は、
「グローバル」「イノベーション」「ソリューション」「サービス」「テクノロジー」「クラウド」「ミッション」
このあたりの、わずかに十語程度の語彙だけで完結しているのだ。
洗練された無駄のない言語体系。
これですべてのコミュニケーションを行なっているのだから、凄いというしかない。


試しに役員たちのブログから1記事に使われている言葉を抜き出してみると、以下のような感じだ。おそらくこの「グローバル」という一語には、物凄い情報量がこめられているのだろう。

会長:グローバル×8、コミュニケーション×3、ビジネスパーソン×1
社長:グローバル×4、テクノロジー×3、サービス×5、イノベーション×1、ミッション×1
役員:グローバル×26



下っ端開発者の自分などには、グローバル! オー、グローバルグローバル! イノベーィション! と楽しそうに繰り返す彼らの高度に洗練された会話の意味が、到底理解できない。
やはり社長や役員になるような人たちの頭の良さというのは凄いものだなぁ、と、素直に尊敬する今日このごろである。

2013年4月6日土曜日

as soon as KDP

この頃KDPで個人出版するのが楽しい。
ここ何年か公募に出してばかりで、外で発表してなかったので鬱屈が溜まっていたらしい。
僕はもともとはネットで、読者と近いところで書いて発表して楽しむのが好きだったのだが、公募の世界は――少なくとも僕が関わってたジャンルや賞は、
「お名前は? 志望動機は? 前職は? なぜ他社ではなく弊社を? あら、ネクタイが曲がっていましてよ? ここに埃が溜まっておりますわ」
みたいな読まれ方をする世界で、なんだかうんざりしていたのだ。

なんというか、中学のときとか、as soon as を「〜するやいなや」って訳す先生とかいたじゃないか。
なんかわざとらしいよなぁって思ってこっちが「〜したらすぐに」とか崩して訳したら、すぐさま「いや、〜するやいなやが正しいのだ」って直してくる。なんだよその使命感。
いいじゃないか、するやいなやじゃなくても。
ていうか聞いたことねえよするやいなやとか。誰が言い出したんだよ。


そんなわけで、ああもう堅苦しいなぁって嫌気がさしてたんだけど、個人出版ならフリーダムなもの出してもいいよねってわけで。
仕事用的なスーツのものを書くのも全然嫌いじゃないんだけど、それは格好いいスーツの話であってさ。
少なくともするやいなやの世界はもうおなかいっぱいなのでした。
でもロシア人みたいで可愛いかもしれないね。スルヤ・イナヤ。

2013年4月1日月曜日

オレのバイクは対人恐怖症


『オレのバイクは対人恐怖症』発売です。

進路に悩んで親とぶつかる大学生の孝之と、自分に自信を持てない引き籠もりのバイク、バイクに巣をつくった江戸っ子人情家の蜘蛛――そんな奴らが繰り広げる、悩める青春短編。
狙いは新ジャンル:蜘蛛萌えだ!


学生の頃に書いたものだけど、たぶんかなり自分っぽい作風のものなんじゃないかなぁと思う。
ちょっと自分の道に悩んでる人とかに読んでもらえると嬉しい。